Andyou! Letter | 「楽しい」を、あなたに届ける

ラグビー選手が虜になった、タッチラグビーの世界。競技を変えた先には違った楽しさがあった。

今回で2回目となるタッチラグビーの取材。日本代表はオーストラリアでの遠征を終え、世界との壁を実感するも、明確に実力差がわかったことで、今後の課題、それに対する打ち手がはっきりと見えたと言います。今回は初の4チーム編成での交流ゲームをフルコートで実施。元トップリーグのラグビー選手も参加し、側から観させて頂いて、感じたことがありました。

5月初旬。タッチラグビー日本代表の選手たちは世界のトップチームとの試合をしに遠征へ行って来ました。

「今回の遠征でオーストラリアやニュージーランドなどの世界トップチームとの試合を通して、実力差が明確になったことが大きな収穫でした。今まではあまりにも差があって、今回は4点差まで詰まりましたが、得点差以上ある本当の実力差、自分たちの引き出しの無さを再確認し、やるべきことがより鮮明に見えてきたので、結果的には行ってよかったと思っています。」


日本代表の矢後選手は言う。
前回の日本代表の合宿に取材をさせて頂いてから約1ヶ月半。
その短い期間中にも、成長された姿を言葉の端々から感じることができました。

自分たちがどこを見据えて、どういったアプローチで2019年までに準備を整えなければならないか。

今後の課題、それに対する打ち手がはっきりと見えたことから、どこか晴れやかな表情に見えました。


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試合前のウォーミングアップを入念に行うタッチジャンキーズの選手たち
今回は日本トップ4チームでの交流ゲームを開催。

都内にある、タッチジャンキーズ( Touch Junkies )と城南ジョーカーズ( Jonan Jokers ) の2クラブチーム。
残り2チームは日本体育大学に所属する選手の編成チームで試合を行いました。



この練習試合は二つの目的がありました。

一つは圧倒的に足りない実戦機会を確保する目的で。

タッチラグビーは代表と言えども、毎日練習できるグラウンドが確保されているわけではありません。
毎回グラウンドを確保して、一定した実戦機会を作る難しさ。
また、毎月の合宿費の負担が学生の選手には重たいなど、様々な意見があがり、昨年度は毎月開催していた代表合宿を今年度は2ヶ月に一回の開催に減らすことになりました。

回数を減らすのであれば、質を上げるしかない。
各クラブチームのより一層のレベルアップが、国内のタッチのレベルをアップするためには必要不可欠。
それは得てして、代表の強化に繋がってきます。
そのために、合宿を実施しない月にはクラブチーム単位での交流戦を、実戦に近い形式( 国際公式ルールの規定のフィールドの広さ、試合時間[20分ハーフ]を採用すること )で行うことで、本番に近いプレー機会を作り、遠征で実感した「試合の経験値不足」を補う必要がありました。
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二つ目の理由は、大学で活躍している目星ある選手を発掘し、日本代表に招集すること。

実戦機会を作って次に重要になってくるのは、「力が拮抗し合ったチーム同士での試合」です。
クラブチーム数もまだ多くない現状では、対戦チームも重なり、お互いの戦術や力がわかりきった中で同じような実戦を積むだけでは、成長の機会が得られません。
何より選手自身、マンネリ化してしまう原因にもなってしまいます。

代表の練習に参加していない大学生選手でも、上でやれる力があるかもしれない。
代表クラスの選手との実戦機会を作ることで、上でやれる力がなかったとしても、著しい成長が見込めるかもしれない。

今回の交流ゲームの機会を作ることは、代表選手の練習目的だけでなく、タッチラグビーのトップ層をまとめて鍛え上げていこう、というものになりました。
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フルコート全面を駆け抜ける選手たち。

ラグビーよりも選手数が少ないので、フィールドにはどうしてもスペースが生まれてしまいます。
また、タックルではなくタッチなので、タッチをカウントされたらボールを地面に置いて素早くリスタート、仲間へ素早いパスを出し、空いたスペースを一気に駆け抜けるスピード感は見ていてハラハラしてしまいました。

トライを決めたと思ったら、相手ボールからすぐに展開が変わって、逆にトライを決められてしまうことも。
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試合後はお互いの健闘を讃え、ハイタッチ
午前10時から始まったゲームは午後4時までほとんど休みなく、チームが入れ替わりながらも自分たちのプレーを一つ一つ確認をし、練習をしていました。
そして今回はもう一つ。
新たな試みがありました。

それは、トップリーグで活躍した元ラグビー選手をお呼びして、交流ゲームに参加してもらうこと。

同じ楕円形のボールを扱うといっても、ルールや戦術は全く異なる。
最初は動き方の確認に時間を取りながらも、似ている競技性から順応するのも早く、すぐにチームに溶け込んでいました。
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城南ジョーカーズに混ざって談笑する元ラグビー選手のお二人

性質が似ている競技のリプレイスは親和性が高い

ラグビーもタッチラグビーもゲームの性質は「陣取りゲーム」です。

相手チームの陣地に侵入し、いかに最深部エリアまで進んでトライを決めるか。
それは同じです。

しかし、競技性質は同じでも、ラグビーとタッチラグビーは全く同じスポーツではありません。

ラグビーはタックルされて倒れても、プレーは継続されます。
それとは異なり、タッチラグビーはタッチされたら一回プレーは中断され、6回という決められた攻撃権の中で相手の陣地最深部まで進まなくてはなりません。

そこに至るまでのスペースを狙う動き方、戦術、ボール回し。
サッカーとフットサルが違うように、この二競技もまた、全く別物なのです。



ではラグビー選手がタッチラグビーをやることはゼロからのスタートなのか?

それもまた違いました。
ルールや動き方は違えど、同じ楕円のボールを扱うこと、また「相手の陣地を取る」という本質は同じです。

実際に参加されたラグビーの選手お二人とも、元々ラグビーで培った高いスキルを持っているので、すぐにタッチラグビーに自分の技術を"転用"することができました。

イメージで言うと、元々持っていた「10」の力が、「7」にはなっても「0」になるわけではないので、残り必要な「3」の力をプレーを通して少しずつ擦り合わせながら掴んでいく、といったところでしょうか。

代表の矢後選手は練習後、私にこう言ってくれました。

「ラグビーのトップ選手に、『タッチラグビーは楽しい、これはラグビーにも活きる』と言って頂けたのはとても嬉しかったです。そして印象に残っているのは "楽しみながらもタッチを学ぼうとしてくれていたところ" でした。」



これは私に大きな気付きを与えてくれました。

種目を変えたとしても、自分が取り組んでいた競技性質を備えた種目ならば、自分の持っていた技術を転用することができ、また元々の種目で培った"楽しみ方"も一緒についてくること。

そして、元の種目の"楽しみ方"に加え、違った"楽しみ方"もあるんだと肌で実感することができるので、大きな充実感を得ることができる。ということです。

またこれには、「もし自分が選んだスポーツで花が開かなかったとしても、自分の競技スキルが「0」にならない領域でリプレイスできる種目を見つければ、活躍できる可能性が生まれる。」という要素も孕んでいるのではないでしょうか。
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ジャンキーズの面々、試合前には掛け声を合わせます

それぞれの競技から"得られるもの"

これはラグビー選手だけでなく、迎い入れたタッチラグビーの選手にも大きな刺激を与えていました。
高いパススキル、ステップワーク等で会場にいる選手の視線を
釘付けにしていました♫
僕自身も一緒にプレーしながらワクワクしっぱなし♫
なぜかというと、プレーしていて、このタイミングでパスがほしいなってところにボールが
くる。ここにいてほしいな。というところにいてくれる。
まるでずっと一緒にプレーしていたかのような感覚!!!
フリースタイル!!!
現日本代表のタッチラグビーの選手たちは、その殆どが大学からキャリアをスタートされた選手たちで構成されています。
比べてラグビー選手は、中学・高校から始めているため、キャリアに大きな開きがあります。

そのため、基本となるパスの精度や質が、日本代表の中でも課題とされていました。

ラグビー選手のトップクラスのパススキルを生で見て、感じ、プレーで体感することで、それは普段のタッチラグビー選手だけの練習では得ることの出来ない経験が得られたことでしょう。


今回の機会は、二つの競技種目にとって交流を深めるだけでなく、お互いの競技に参考になる要素をお互いが持って帰れたことが、大きな収穫だったに違いありません。
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前回の取材をさせて頂いてから、今回、変化がありました。

それは、タッチラグビーの選手の皆さんが私に向かって挨拶をしてくれたことです。

いや挨拶なんて当たり前では?と思われたかもしれませんが、前回も挨拶はしてくれました。(笑)

今回違ったところは、明らかに「また来てくれたんですね。ありがとうございます。」といった気持ちが伝わる挨拶、声掛けを私にしてくれたところです。


前回の初めての取材で、皆さんの前で挨拶をさせてもらった時に、「この人たちは誰なんだろう...?」といった空気感が漂っていましたが、それは当然のことです。

まだ今回で2回目にも関わらず、少しずつ信頼を築けているような感覚を持てたことは、今後も応援したくなる気持ちにますますさせてくれました。

いつも快く迎えて下さり、ありがとうございます。


今後も試合や、レクリエーションのイベント等もあるそうなので、次はそちらにもお邪魔させてもらいたいですね。


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アルコ アルコ