前回の取材から約半年。
障害があっても素敵な世界にいける! -アスリート・山崎晃裕の挑戦-
山崎さんは生まれつき右手が欠損している。それでも健常者とともに競い合ってきた。ハ ンデがあるからこその面白さもあった。2014 年、障害者野球の世界大会で日本代表の中心 選手として活躍。その後パラリンピック種目のやり投げに転向し、現在は東京パラリンピ ックでのメダル獲得を目指している。ひとりのアスリートとしての挑戦、そしてそこに込 められた想いを語ってくれた。
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イギリスはロンドンで行われた、世界パラ陸上で上肢障害のクラス・男子やり投げで見事5位入賞を果たした山崎選手。
帰国後、来年のアジア選手権に向け再スタートを切りました。
練習の合間を縫って、大会の結果報告も兼ねて、色んなことをお話して下さいました。
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帰国後、来年のアジア選手権に向け再スタートを切りました。
練習の合間を縫って、大会の結果報告も兼ねて、色んなことをお話して下さいました。
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その場にいれるだけで幸せだった。
ーー ロンドンで行われた世界パラ陸上に出場してみて、終えてみた感想を教えてください。
山崎さん:初めての世界での大きな舞台だったので、たくさんの驚きと発見がありました。やっぱり各国から出場してくる選手のパフォーマンスの次元が違いましたし、大会の大きさや運営も、大型のスクリーンで映し出されたり、ダンスパフォーマンスで会場を盛り上げたりと、日本のパラスポーツの環境では考えられないくらいの規模と演出でした。ロンドン五輪の成功もあって、元々お客さんも多く来るとは聞いていたのですが、一日に3万人くらい入ったと聞きましたし、”一人のアスリート”として観てくれているなというのも感じましたね。
ーー それはどういうところで感じたのですか?
山崎さん:まず選手への”リスペクト”があるなと思いました。私たちにサインを求めてくる姿、応援している姿勢の一つ一つから感じ取れましたね。そんな大舞台で投げれたというのは本当に大きな経験になりました。圧倒されるかなと思いましたが、そんなことはなく投げていてとても楽しかったです!その場にいれるというだけで幸せでした。
やり投げに出会って、人との出会いや繋がりが増えた。
ーー 大会で感じた課題や修正点など、新たな発見はありましたか?
山崎さん:技術的なこと、体力的なこと、もう全てですね。まだまだメダルには届かない。全てが足りないといった感じ。あとは練習するしかないと思っています。2019年の世界大会で金メダルを狙っていくつもりで、そして2020年の東京パラリンピックへ向け練習していこうと考えています。
ーー 具体的にどの部分を練習して強化していこうと?
山崎さん:やはり海外の選手との大きな力の差がある部分は、助走スピードでした。車とかでも急ブレーキをすると体が浮くじゃないですか?同じように、助走スピードを上げつつも、投げる瞬間にブレーキをどれだけかけられるか、自分のバランスを崩さずに投げれるか。まずは助走の改善を図っていきたいですね。今大会でシーズンベストが出たので、自分のパフォーマンス自体悪くはなかったんですが、終わってみて冷静に考えてみると、もっとやれることがあったと。映像を見返してももっと攻めていけたんじゃなかな、と感じましたね。
ーー なるほど。その改善を図るために今の練習環境はどうですか?
山崎さん:やり投げを始めてから1年9ヶ月くらいのキャリアですが、所属している大学とは別に他大学でも練習環境が見つかって、また強化練習や合宿にも呼んでもらえるようになり、そこで色んなコーチにも接する機会が増えて、自分自身の”輪”が広がっているように思います。その中で様々な人からサポートしてもらえるようになり、こうして取材を受けさせてもらう機会も増えてきているので、徐々に日本のパラスポーツの環境も変わってきているんじゃないかな?と思います。
障害者スポーツを通して、貢献できることを考えていく。
ーー 直近ではどのような目標を掲げていますか?
山崎さん:アジアのレベルと世界のレベルがあまり変わらないんですよね。というのも、今回の世界選手権でも私より上の上位4人が全員アジア人でした。来年にアジア選手権があるので直近ではそこでリベンジをしたい。そのためにやれることは全てやろうと思っています。
ーー その先のキャリアも考えているんですか?
山崎さん:正直なところ、東京オリンピックに向けて全力で挑んでいくことしか考えていないので、それより先のことやキャリアは未定ですね。ただ、もちろんいつかは引退はするので、自分がこれまで経験をしてきたことを活かせるような活動をしていきたいです。指導者になるとかやり投げで、というよりかは、パラスポーツに携わっていきたいと考えていますね。パラスポーツがあったから今の自分がある。僕に「道」を示してくれたな、と思っています。
ーー パラスポーツに出会って取り巻く環境が変わっていったんですね。
山崎さん:大学に入って障害者野球に出会ました。そこから1年で代表に選ばれて、でも何か物足りなかったんです。僕らのやっていることって誰も知らないんですよ。メディアにも取り上げられないし、一歩外の世界に出たら誰にも知られていない。障害者野球ってあるんだ、みたいな。自分が頑張ってきて日の丸を背負っても、誰にも知ってもらえないのは辛いですよね。だからこそ、パラスポーツに目を向けようと。自分の活躍が、障害を持っている人に少しでも道を照らせたらなって。自分が得てきた経験を伝えていくことをしていきたいですね。
【世界パラ陸上ロンドン1日目】山崎晃裕 シーズンベストで5位 男子やり投げ決勝F46
via www.youtube.com
ーー ありがとうございます。最後に、今後の目標、2020年東京五輪に向けての意気込みを聞かせてください。
山崎さん:はい。今回は5位入賞を果たせましたが、もっと世界で戦える自分になっていきたい。もう2020年まで、あと3年しかないんですね。選考会までを考えるとあと2年しかない。時間はもうないと思っています。少ない時間でもやらなきゃいけないことはたくさんある。毎日を競技と結びつけいく生活を続けていって、2020年で金メダルを取るために、一日一日を大切にしてやっていきます。そして先ほども言いましたが、僕ら障害を持っているアスリートが活躍をして、世に知られていくことで、障害を抱えている人、スポーツをやっていない人にも希望を与えられるような。理想を言うと、もっと住みやすい社会になればな、と考えています。
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