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世界一面白いプールを! -企画師・西川隼矢が考える未来のプール展望-

世界一面白いプールを作るというコンセプトを掲げ、プール研究家として事業をされている西川さん。アクアサイネージやPoolnoと聞いたことがないコンテンツが次々と飛び出してくる。それらのツールは全て既存のプールが抱える問題点や衰退している水泳業界を変えるための施策だ。実験しながらやっているとは言うが、クラウドファンディングを通して少しずつ着実にファンを作り、広めている。かつてはアスリートでもあった西川さんが考えるプールの問題点、それを変えるためのビジョンを、我々に熱く語ってくれた。

大学まで競泳競技の選手だった西川さん。
オリンピックの選考会にまで出場するアスリートだった。
現役を引退後、フリーランスのプール専門フォトグラファーとして5年ほど活動をしていた。

写真を撮った方からの反響は良く、喜んではくれていたが、
「西川さんに写真を撮って欲しいから水泳を始めました!」という人がいなかった。

それでは自分が携わってきた水泳界の市場に、
全く影響を与えられていないのではないか、と考えるようになる。
自分が水泳界に貢献したい、水泳人口を増やしたいという想いと、
今自分が取り組んでいることにズレを感じるようになった。
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西川さん撮影
水泳界に貢献するために、面白いアイテム開発の企画構想を練るようになっていった。
そのタイミングで法人化、さらには自分たちだけで出来ることには限界があると感じ、有志でコミュニティを作ることに。東京プール研究室の発足だ。

会社設立のオープニングセレモニーの場で、
「東京プール研究室を作ります。僕達だけの力では足らないので皆さん応援して下さい!アイディア下さい!」
と社外でも人を巻き込んでいく。

最初はアイディア出しやディスカッションする会を定期的に開催していった。
その中で「プールの下にディスプレイを敷き詰めて、そこから流れてくる映像を見ながら泳ぐというのは面白いのではないか?」
と言う話が出てきた。アクアサイネージの構想が生まれた瞬間だった。
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東京プール研究室、研究員の皆さんと

東京プール研究室_2016クラウドファンディングTOP映像

はじめはできるとは考えてなかったという。
「プールの地面全面にディスプレイを敷き詰めようと考えていましたが、ちょっと待って、これ何億かかるの?って話になって、1つのディスプレイだけ沈めて実験してみようとなりました。 (笑)」
こうして西川さんの最初のチャレンジがスタートする。

しかし前例のない挑戦、
プールに沈める65インチの超大型ディスプレイや、それを保護するアクリル製の特注防水ケース、必要となる諸々の経費を見積もりをしたところ、ミニマムでも300万以上の費用がかかることがわかった。
なんとか資金を集める方法を考えた時、数多くのファンとなる方にリーチでき、かつ資金を集められる手法としてクラウドファンディングを利用することに決めた。

「当時、クラウドファンディングを使って物を作っているスポーツ関係者がほとんどいない状態で、私にできるのか不安でした。」

持ち前の人を巻き込む力を発揮して、関係者・スポンサーを巻き込みながら、なんとか目標金額を達成する。
そこから1ヶ月半、爆速で準備を整え、完成披露会まで実施することに成功した。

【アクアサイネージ】aquasignage 体験者の声

完成披露会にはメディアからの取材も入り、そこからの反響もあって各所から問い合わせが殺到した。
そこでアクアサイネージを体験してみたいという全国各地を回ることに。
活動を広げていくと課題やもっとこうした方が良いというアイディアが次々に出てくる。

「例えば、ディスプレイから流れるトップスイマーの泳ぎと自分の泳ぎを重ねながら泳ぐことで、圧倒的に技術習得が早くなると思うんですよね!今までは一回一回泳ぎを止めて指導しなければいけなかったのが、泳ぎながらそのまま指示を出すことができるのでとても効率良くなります。アスリートの練習のツールとしても使えますよね。」

技術習得の根本を、最先端の技術を使いながら変えていける。
課題がある中でも、一歩ずつ施策を前に進め、実験しながら得られるフィードバックを次の施策や構想に繋げる。
行動力から生み出される「面白いプール」の輪郭が少しずつ見えるようになった。
他にも、アクアサイネージでデジタルとの融合を”小さいプール”の中で進めることができるという。

「⼀家に⼀台、庭やガレージにプールがあることが当たり前な文化にすることが理想です。子供から両親、足腰が弱ったおじいちゃんおばあちゃんまで、3世代が自宅で楽しみながら健康になれたら最高だと思うんです!」

そうなると既存のプールの利用者が減ると⾔われるが、⻄川さんはそれは逆だと説明する。

「現在のプール利用者は人口の1%にも満たない人数です。自宅にプールが当たり前になりプール利用者数が何倍にも増えることで、25mプールの需要も必ずあがります。結果、全国のプール利用者やマスターズ大会の参加者は必ず増大すると考えています。」
新たなプールの可能性を発揮するための、小さいプールを使った新しい施策の挑戦。
その第2弾として、Poolnoという商品を出すことに。
Poolnoとはプール専用のエクササイズマットのこと。
SUPヨガ事業をしている方と飲み会の場でプールにSUPヨガを使えないかいう話から盛り上がり、実現しようとなった。

こちらも現在クラウドファンディングで募集を進めている。

【Poolno】プールエクササイズボード《プールノ》PV

現在、プールは若い年齢層、特に女性離れが進んでいる。
その理由としては、
・水着を着るのが恥ずかしい
・着替えやメイク直しが面倒臭い
・楽しくない(というイメージがある)
というものだった。

Poolnoは水上エクササイズなので、水に浸かることはない。
スイミングキャップもいらなければ、体型がわかりやすい水着を着る必要もない。
よりプールに足を運びやすくなる企画となっている。
既存のルールに縛られない自由なファッションで、自由な楽しみ方ができるプールスタジオ【TOKYO POOL LABO】を足立区の廃プールをリノベーションして作り、多くの人に体験してもらう。
なおこのLABOは今後Poolno以外にも新しいプールの楽しみ方を開発し、プールの可能性や魅力を多くの人に発信していく予定だ。
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TOKYO POOL LABO 完成イメージ(模型)
こうした企画の数々は「プールを面白くしたい」という一心からくるものだ。

「⼩さいプールにした理由は、25m プールに限界を感じたからです。⼦供からお年寄り、遊びたい人からトレーニングしたい人まで、いろんな層のいろんな目的のお客さんが一つのプールに同じ時間に共存するのは無理があり、必ずクレームが出ます。Apple Watchなどのウェアラブル端末も安全面から禁止にするプールがほとんどです。同じ時間に共存するにはプールに間仕切りを沈めて空間を分けるしかないが、安全⾯を考慮すると実現は難しいのです。だから、⼩さいプールにして完全に空間を分けてしまうことで全員がストレスなく同時にプールを楽しめることができると考えました。小さいプールでも腰に紐を付けることで連続して泳ぐことが可能で、泳ぎながらテレビを観たり、水中ウォーキングしながらスマホを操作できたり、無重力空間でVRを楽しんだり、そうやってテクノロジーもプールに入れることで色んなニーズに応えられる未来のプール空間を作ることができると考えています。」

⾃分を育ててもらった⽔泳界に貢献したい。
多くの⼈がプールに来てもらいたい、利⽤してもらいたい。
そのためには”⾯⽩くなければ”⼈は来ない。

「少子高齢化や若者層のプール離れで⽔泳市場の縮小はこれからもどんどん進んでいくと考えています。そして、プールの事故が起きるたびにどんどんルールが厳しくなっていっているのが現状です。誰かが言わないといけない。クレームを恐れ、進化を拒み、歩みを止めたプールは衰退していく一途だと。こんなこと言うと今のプールを否定していると勘違されてしましそうですが、そういうわけではございません。陸上の世界でどんどん多様化が進んでいるように、プール界にも多様化の波を起こし、従来のプールと新しい形態のプール、好きな方を選べるようにすることで、より広い層にアプローチでき、プール利用者が増え、そして水泳市場が拡大すると考えています。必ずプールの新時代を創ります!どうか応援して下さい!」

東京プール研究室は、これからもワクワクするようなアイテムを開発していくという。
「楽しい」の定義は世代や⼈の趣向によって様々である。
幅広い年齢層、⾊んなニーズに世界⼀対応できるプールを作ることが今後の⽬標だ。
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【 Profile 】
西川 隼矢(Junya Nishigawa)プール研究家
1982年香川県生まれ。鹿屋体育大学体育学部卒。公益社団法人日本広告写真家協会正会員。
水泳のインストラクター、SEを経て2010年からプール専門の水中フォトグラファーとして活動を始める。2015年7月に《プールのことしかやらない会社》株式会社Rockin' Poolを設立。同年9月に《2020年までに世界一おもしろいプールを作る》を目標とする東京プール研究室を立ち上げる。
2016年4月にCAMPFIREのクラウドファンディングで360万円以上を集め完成させてアクアサイネージはWBSの2016年トレンドたまご年間大賞最終候補作品に選ばれる。
日本広告写真家協会主催APAアワード2017 広告部門 優秀賞受賞、作品部門 激励賞受賞
Twitter : @gawajun
Instagram : @junya_nishigawa
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アルコ アルコ